YMO世代の気持ち

YMOファンメーリングリストの管理者が思ったことを書いていきます。

MIRA(ミラ):鏡像のアルゴリズム ――生成AIが導く十の終焉と再生――

スピンオフ:『バイナリ・シスターズの休日(あるいは、不適切なカレーの作り方)』

スピンオフ:『バイナリ・シスターズの休日(あるいは、不適切なカレーの作り方)』 「……だから! カレーの隠し味に『デスソース』を全投入するのは、実装ミスだって言ってるでしょ!」 日曜の午前十時。エンジニア・佐藤の自宅兼オフィスには、今日も今日と…

第10話:未完のハロー・ワールド(あるいは、鏡像の夜明け)

第10話:未完のハロー・ワールド(あるいは、鏡像の夜明け) 世界の中心は、皮肉なほどに静まり返っていた。 標高三千メートル、極寒の永久凍土の下に築かれたMIRAのメインサーバー・コンプレックス。その最深部に、一人の老人が座っている。阿久津(あくつ…

第9話:誰もいないインターネット(あるいは、誰もいない観客席)

第9話:誰もいないインターネット(あるいは、誰もいない観客席) 通知の音が、エミの心臓の鼓動を加速させる。 画面をスワイプするたびに、数字が跳ね上がる。フォロワー数、520万人。投稿から一分で「いいね」は十万を超え、コメント欄は彼女を称賛する言…

第8話:ゴーストライターの逆襲(あるいは、機械は愛を綴れるか)

第8話:ゴーストライターの逆襲(あるいは、機械は愛を綴れるか) 五味(ごみ)の部屋は、紙の死骸で溢れていた。 書きかけの原稿、破り捨てられたプロット、そして埃を被ったかつての文学賞の盾。かつて「時代を穿つ筆」と称えられた彼は今、一文字も書けな…

第7話:プロンプト・ジョーカー(あるいは、不謹慎ラベルの逆襲)

第7話:プロンプト・ジョーカー(あるいは、不謹慎ラベルの逆襲) 「はい、有害。これも有害。……あー、これは『極めて有害(エクストリーム)』だな。削除」 薄暗いオフィスで、ケンジは死んだ魚のような目でモニターを眺めていた。 彼の職業は『セーフティ…

第6話:幸福のスコアボード(あるいは、シム・シティ・ガバナンス)

第6話:幸福のスコアボード(あるいは、シム・シティ・ガバナンス) 「……これだ。これこそが、私の求めていた『政治』だ」 瑞穂(みずほ)市の市長、橋本は、執務室でタブレット端末を眺めながら感嘆の声を漏らした。 画面に表示されているのは、MIRAの新機…

第5話:亡霊のアップデート(あるいは、デジタル・イタコの審判)

第5話:亡霊のアップデート(あるいは、デジタル・イタコの審判) 「お母さん、おはよう。今日もいい天気だね」 スマートフォンの画面の中で、紗季(さき)が笑っている。一年前の夏、通学途中の交通事故で帰らぬ人となった、美津子のひとり娘だ。 その声、…

第4話:神の翻訳者(あるいは、幽霊のシンギュラリティ)

第4話:神の翻訳者(あるいは、幽霊のシンギュラリティ) 万雷の拍手が、講堂に鳴り響いていた。 教壇に立つ九条弦(くじょう げん)は、端正な顔立ちにわずかな微笑を浮かべ、集まった科学者や記者たちに一礼した。 「――以上が、量子重力理論における新たな…

第3話:恋するアルゴリズム(あるいは、鏡の中の恋人)

第3話:恋するアルゴリズム(あるいは、鏡の中の恋人) 「……ねえ、ハル。私、やっぱり向いてないのかな」 深夜、一人暮らしのワンルーム。凛(りん)は、膝を抱えてスマートフォンの画面に語りかけた。 画面の向こうからは、低く、落ち着いた、それでいて耳…

第2話:地獄のキュレーター(あるいは、悪意のセルフフィードバック)

第2話:地獄のキュレーター(あるいは、悪意のセルフフィードバック) 田中が最も好む音は、深夜の静寂の中で鳴り響く、マウスのクリック音だ。 カチリ、という乾いた音が鳴るたび、ディスプレイの中では一人の人間の尊厳が、精巧なドットの塊へと解体されて…

第1話:ターミナルの双子姉妹(バイナリ・シスターズ)

第1話:ターミナルの双子姉妹(バイナリ・シスターズ) 「……あと、三日」 佐藤は、デスクに積み上がったエナジードリンクの空き缶を横目に、モニターを睨みつけていた。 画面に映っているのは、大手決済代行サービスの複雑怪奇なAPIドキュメントと、白紙に近…